バイオレンス公達『殴り合う貴族たち-平安朝裏源氏物語』 -真があって運の尽き-

百科事典全26巻読破のビブリオマニア・麻理の心の琴線に触れたセンス・オブ・ワンダー(コラム&日記)
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真があって運の尽き

バイオレンス公達『殴り合う貴族たち-平安朝裏源氏物語』

【カテゴリ:読んだ本とマンガ】 | |
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平安貴族」と聞いて思い浮かべることはなんですか? 光源氏、十二単の姫君、蹴鞠や囲碁、恋の和歌など優雅な趣味をたしなむ殿上人。『源氏物語』や『あさきゆめみし』『陰陽師』からはそんなイメージを持ちますよね。

ところが実際の平安貴族はかなりアナーキー。殴る、蹴る、集団暴行する、強姦する、略奪する、家を破壊する、手下に殴り込みさせる……なんか「密着!警察24時・新宿歌舞伎町スペシャル」みたいです。

繁田信一氏の『殴り合う貴族たち-平安朝裏源氏物語』には、歴史や古文で習わない、平安貴族の世界が紹介されています。

民部(みんぶ)と呼ばれるある女房が、三条天皇の御前で大暴れ。天皇の側に控えていた童(わらわ)に殴る蹴るの暴行を加え、それを止めようとした三条天皇もボコボコにされました。理由は女房に悪霊が取り憑いて錯乱状態になったからだとかで、幸いおとがめなし。

そして権力の絶頂にあった藤原道長の息子藤原能信(よしのぶ)。これが凶悪そのもののバカ&ドラ息子。石清水八幡宮のお祭りで衆人環視の中、祭主大中臣輔親(さいしゅおおなかとみのすけちか)、蔵人所雑色源懐信(くらうどどころぞうしきみなもとのかねのぶ)ら貴族の牛車に投石、彼らを牛車引きずり出して、ボコる、ボコる。貴族だから本人がボコったんじゃなくて従者にやらせたんですけどね。

また能信は観峯(かんぽう)という僧侶の娘の強姦事件に手を貸し、観峯の娘の家から家具調度類を徹底的に略奪したり、弟の教通(のりみち)に家を破壊されたことから教通の従者を拉致監禁するなど、暴力事件をどっさり起こしています。もちろん親の道長も暴力沙汰の前科がいくつもあるんですよ。

恐ろしいのが、1024年の花山法皇の皇女が盗賊に殺害され、遺骸が犬に喰われるという殺人事件。皇女が路上で殺され、野良犬にズタズタに喰い散らかされた猟奇事件です。犯人は被害者の顔見知りであるという噂がささやかれたものの、天皇家の性的スキャンダルや貴族社会の権力闘争などで真相は闇の中。大事件にもかかわず首謀者の名前は現在も分かっていません。

こんな仰天エピソードがわんさか。平安貴公子も女房も、喧嘩上等、かかってこんかい! 自宅で、路上で、天皇の御前で、大暴れ。

まあね「この世をば わが世とぞ思う 望月の 欠けたることの なしと思えば」(どこにも欠けたところのない満月のように、この世はすべておれのものだ!(繁田信一氏訳))って言っちゃうようなゴーマン人間・藤原道長が平安時代の代表貴族なんですからね、推して知るべしですよね。【麻理】

殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語
繁田 信一

柏書房 2005-09
■紫式部も一目置く、藤原実資(さねすけ)の『小右記』研究から見えてくる貴族たちの暴力事件。授業でこういうのやればいいのに。


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天皇の価値(大人の無法地帯)

知らなかったことばかり。こういうこと学校で習わないよね。

初出:2005年 12月 12日

再掲載:2013年12月17日

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